福岡県太宰府市の丸山病院(内科・消化器内科・循環器内科・リハビリテーション科)

2020-11-12

生活習慣病:糖尿病

糖尿病は、血糖値が高くなる病気です!

血糖値とは、血液中の糖分(ブドウ糖)の濃度です。健康な人では、食事前(空腹時)の血糖は80~110mg/dlで、食事後は140mg/dlくらいまで上昇します。

正常の血糖値が維持できなくなり、空腹時が126mg/dl以上、あるいは食後の血糖が200mg/dl以上の高血糖になった場合が「糖尿病」です。「今日は、検査をしてみましょうか」と言われて測った血糖(随時血糖値)が、200mg/dlを越えていた場合も「糖尿病」です。

ブドウ糖は体にとって大切な成分なので、血糖値を一定に保つような体の仕組みが働いています。その体の仕組みの大半を担っているのが、インスリンという膵臓から分泌されるホルモンです。

インスリンが分泌される量が減ったり、インスリンの作用が低下すると糖尿病になります。

元々、日本人(アジア人)のインスリンを分泌する能力は欧米人に比べて弱いので、食事の摂り過ぎや食生活の欧米化により糖分の処理が追いつかなくなり容易に糖尿病に傾いてしまいます。厚生労働省から発表された平成28年国民健康・栄養調査結果の概要によると、「糖尿病が強く疑われる人」は約1,000万人と推定されます。

糖尿病になると、動脈硬化の進行が早まります!

通常は、糖尿病であっても自覚症状はありません。症状がなくても、高血糖の悪影響はじわじわと確実に広がっていきます。糖尿病と分かっていても病院に行かなかったり、治療していても薬の服用方法を守らず食べ過ぎを続けていると、血管がガチガチに固くなり詰まりやすくなる動脈硬化が進行してしまいます。そして何年かたつと、「合併症」と呼ばれるさまざまな病気や身体の障害が現れます。

糖尿病の治療目標は、合併症の予防です!

脳の動脈硬化が進めば脳梗塞、心臓では心筋梗塞、足の動脈が詰まると閉塞性動脈硬化症をきたします。これらの病気は、比較的太い動脈が障害されておこる合併症です(大血管障害)。細い動脈の障害では、眼(網膜症)や腎臓(腎症)や神経(神経障害)が障害されます。

最近は、糖尿病患者さんが失明することは少なくなったようですが、今でも成人の失明の原因の第1位は糖尿病網膜症だそうです。腎臓の働きが10%未満の重症腎不全になると人工血液透析が必要になりますが、血液透析になる原因で一番多いのも糖尿病腎症です。糖尿病治療の最大の目標は、高血圧症と同じようにこれらの合併症を予防することです。

糖尿病治療の良し悪しは、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)でチェックします!

HbA1cは、過去1~2か月間の血糖値の平均値を反映しています。検査した時の血糖値が正常でも、HbA1cが高ければ過去1~2か月間の血糖は高かったことがわかります。

ヘモグロビン(Hb、血色素)は赤血球内のタンパク質の一種で、全身に酸素を送る働きがあります。血液中のブドウ糖がヘモグロビンと結合すると糖化ヘモグロビンになります。HbA1cは、糖化ヘモグロビンがヘモグロビン全体に占める割合をパーセント(%)で表したものです。

血糖値が高いとHbA1cは増え、血糖が低ければHbA1cは下がります。HbA1cが6.5%以上の場合は、糖尿病と診断されます。HbA1c 6.0%未満が維持できれば理想的ですが、日本糖尿病学会は「糖尿病合併症予防のための目標値」としてHbA1c 7.0%未満を定めています。その目標値に対応する血糖値は、空腹時 130mgldl未満、食後2時間 180mg/dl未満が目安になります。

糖尿病治療にも、生活習慣の改善が重要です!

ここ10年程で色々な作用機序の新しい糖尿病治療薬が発売され選択肢が増えたので、治療する側としては以前より随分楽になりました。しかし、新薬は値段が高いので、むやみやたらに薬の数を増やすわけにもいきません。

糖尿病の薬のことは医者に任せるとして、患者さんには、「血糖値が高くなることを避けること」、「血糖値が高くなりにくい体質改善」にトライしていただければと思います。

血糖値が高くなることを避けるには?

まず食べ過ぎを控えることです。いくら良い薬を服用していても、食事量が適正じゃないと治療はうまくいきません。食べ過ぎは体重増加につながりますから、一定の体重をキープできていれば食べ過ぎはないと考えて良いと思います。

ゆっくり時間をかけて食べること、よく言われるようにおかず(野菜)から食べるようにすることも血糖の上昇を抑えてくれます。白米を雑穀米や玄米、モチ麦などに置き換えるのも良い方法です。一方、缶コヒーのように甘みの強い飲み物やお菓子は禁物です。

血糖値が高くなりにくい体質をつくるには?

運動が重要です。運動により消費エネルギーが増えれば肥満解消が期待でき、肥満が軽くなればインスリンの効率が良くなり血糖が上がりにくくなります。運動の種類は、ウォーキングやスロージョギングなどの有酸素運動がお勧めです。どのような時間帯であっても運動しないよりした方が良いのですが、血糖を低下させるためには食後の運動がベストです。

ウォーキング

ウォーキングなどの有酸素運動により筋肉への血流が増えると、ブドウ糖が筋細胞の中に取り込まれて血糖値は低下します。食事の30分〜1時間後に10分間のウォーキングを行ったところ、血糖値が10〜20%低下したという報告もあります。

また、筋力トレーニングによって筋肉が増えると、ブドウ糖の取り込み量も増えるので血糖値はより下がりやすくなります。ただし、運動をやめるとその効果は3日くらいで失われてしまうと言われており、運動を継続することが大切です。

簡単な筋力トレーニング

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