福岡県太宰府市の丸山医院(内科・消化器科・循環器科・リハビリテーション科)

2023-06-06

心臓弁膜症の診断

どのように診断するの?

心雑音は、診断の糸口として重要です!

正常の弁は大きく開くので、弁を通過する血流は比較的ゆるやかで血流の乱れはありません。一方、狭窄症では、弁が開かず血液が通過する断面積が狭いので、血流は速くなり乱流を発生します。閉鎖不全症では、弁の接合が緩んだ隙間から血液が勢いよく心房側へ逆流するので乱流を生じます。このようにして発生した乱流が、心雑音の成因です。

心雑音は、聴診器を胸に当てれば聴き取ることができます(聴診)。心雑音が胸のどのあたりで大きく聞こえるかで、どの弁が音源か推定できます(下の図)。また、心雑音のタイミングが収縮期(心室が縮む時)か拡張期(心室が拡がる時)か、ピッチが高調か低調かなどを総合すると狭窄症か閉鎖不全症かが判別できます。
でも、「全ての心雑音=心臓弁膜症」ではなく、機能性雑音という無害性の心雑音もあります。とにかく、「心雑音がある」と言われた時は、心臓の専門医(循環器内科医)を受診することをお勧めします。

心雑音の発生箇所イメージ

赤(A)の領域では大動脈弁由来の、水色(P)では肺動脈弁由来の、オレンジ色(M)では僧帽弁由来の、緑(T)では三尖弁由来の心雑音が大きく聞こえます。

健診の心電図異常がきっかけで、心臓弁膜症が見つかることもあります。心臓弁膜症のために左心房や右心房が拡大すると、心房細動になりやすくなります。左心室の壁が分厚くなったり内腔が拡大すると、左室肥大の所見や心室性期外収縮を認めることがあります。しかし、このような心電図異常がみられるのは、心臓弁膜症が進行してからです。また、この後で解説する自覚症状も、認めるようになるのは心機能が低下して心不全になってからです。

これに対して心雑音は、聴診さえ行えば自覚症状がない病初期から聞こえるので、心臓弁膜症の診断の糸口として最も重要です。

どんな症状があるの?

心臓弁膜症でみられる症状は、主に心不全の症状です。心臓弁膜症が進行して心不全になるまでは、自覚症状は全くありません。
左心系(僧帽弁と大動脈弁)の弁膜症では、肺での血液のうっ滞(うっ血)が起こります。肺うっ血が高度となり肺でのガス交換(血液に酸素を取り込み、二酸化炭素を肺に排出)に支障をきたすと、階段や坂を登ったときに息切れや息苦しさを感じます(左心不全)。一方、右心系(三尖弁と肺動脈弁)の弁膜症では静脈系でうっ血が起こり、手足や顔のむくみを生じます(右心不全)。

心不全症状がある場合は、心不全の治療のために入院が必要なことが多く、心臓弁膜症が手術を要する段階まで進行している可能性もあります。疑わしい自覚症状がある場合は、数日以内に循環器内科医を受診していただきたいです。

どんな検査をするの?

胸部レントゲン・心電図・採血検査・心エコーを行います。胸部レントゲンでは心臓の大きさを確認し、心臓のシルエットからどの心腔(左心房や左心室など)が拡大しているかを推測します。
採血検査では、BNPまたはNT-proBNPが重要です。BNPとNT-proBNPは心不全の診断に有用ですが、心臓にかかる負荷の大きさに応じた値を示すので心不全になる前から心臓弁膜症の進行度の指標として有用です。

心臓弁膜症の診断で欠かせないのが、心エコー検査です。心エコー検査では、動いている心臓をリアルタイムに動画で観察して、心臓弁膜症の診断や重症度を評価します。さらに、心臓弁膜症のために心機能が損なわれていないかどうかもチェックします。
狭窄症では、弁口面積(弁が開いた時の断面積)、弁を通過する血流速度、弁の前後(僧帽弁では左心房と左心室、大動脈弁では左心室と大動脈)での内圧の差が重要な指標です。弁口面積が狭くなるほど、血流速度は増し弁の前後での圧較差は大きくなります。
閉鎖不全症(逆流症)では、重症化して逆流量が増えると左心室の内腔は拡大し収縮能は低下します。左心室の内径が一定の基準を上回り、左室駆出率が一定の基準を下回ると手術が妥当と判断されます。

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