福岡県太宰府市の丸山医院(内科・消化器科・循環器科・リハビリテーション科)

2022-09-07

心不全の診断

心不全って、どんな症状があるの?

心不全の症状は、実に様々で心不全に特有の症状はありません。血液のうっ滯によって起こる症状と、心拍出量が高度に低下したために起こる症状があります。

全身に血液を送り出しているのは左心室であり、心不全の多くは左心室が原因です。左心室の機能が高度に障害されると送血能力が低下して血液が前へ進まなくなり、血液のうっ滞(いわば渋滞)が起こります。血液のうっ滯(うっ血といいます)は、左心室→左心房→肺静脈→肺と血液の流れをさかのぼって波及します。肺にうっ血が及ぶと、血液のガス交換(酸素を血液に取り込み、二酸化炭素を肺に排出する)ができなくなり息苦しさや呼吸困難が起こります。最初のうちは、「普段は何ともないけれど、坂道や階段を登ったり重いものを持って歩くと息苦しくなる」というようなことが起こります。さらにひどくなると、呼吸をするたびに喘息のようにヒューヒュー・ゼーゼーいうようになり(心臓喘息)、息苦しくて横になれず動けなくなります(起座呼吸)。心臓喘息や起座呼吸となった場合は、緊急入院が必要です。肺のうっ血によって起こるこれらの症状は、左心不全の症状です。

左心不全のために肺でのうっ血が進行して、肺→肺動脈→右心室→右心房さらに静脈系にまで波及すると、手足や腹部臓器などでうっ血が起こります。その結果、手足や顔のむくみ(浮腫)、肝臓のうっ血(腹部の張りや鈍痛を感じます)、腸管のむくみ(食欲低下や吐き気の原因となります)を生じ、腹水や胸水が溜まります。静脈系でのうっ血で起こるこれらの症状を右心不全症状といい、左心不全がかなり進行してからみられます。まれに、右心室が原因で右心不全が起こる場合もあります。

心不全がさらに進行して心拍出量が高度に低下すると、「疲れやすい」「だるい」「身の置き場がない」などの症状が出ます。四肢冷感・チアノーゼ(血中の酸素不足のため唇や指先などの皮膚が青紫色になる)・冷汗・低血圧などがみられることもあります。

心不全は、どんなふうに診断するの?

心不全は、症状や身体所見と、検査の結果を総合して診断します。息切れなどの自覚症状、手足や顔のむくみ、体重の増加(心不全で起こる体重増加は、余剰な水分が体に貯まることが原因です)などは診断のために重要な情報です。採血検査では、BNPまたはNT-proBNPというバイオマーカーがポイントになります(下の図をご参照ください)。心電図検査で、心筋梗塞や不整脈がないかどうかを確認します。胸部レントゲン検査で、心臓の大きさや肺うっ血・胸水などの有無をチェックします。心不全の診断で最も重要なのが、心エコー検査です。心エコー検査では、左心室の大きさや壁の厚さなどの心臓の形態やポンプ機能(左心室の収縮能と拡張能)をチェックします。さらに、心臓の逆流防止弁(僧帽弁や大動脈弁など)の逆流(閉鎖不全症)や狭窄症などの心臓弁膜症が診断できます。

BNPおよびNT-proBNPの値と、心不全診断の確からしさをまとめた図です。
BNPは、心臓から分泌される脳性ナトリウム利尿ペプチドというホルモンです。proBNP(BNPの前駆体) からNT-proBNPが切り取られてBNPができるので、NT-proBNPはBNPの副産物です。BNPとNT-proBNPは心不全が重症であるほど高値となり、心不全診断のバイオマーカーとして有用です。ただし、高齢者や腎臓の働きが悪くなっている場合は、心不全がなくてもやや高めになることがあるので注意が必要です。

出典:日本心臓財団のホームページより
   https://www.jhf.or.jp/check/heart_failure/10/

以上の検査は、クリニックでも受けることができます。これらの検査で心不全と診断できれば、直ちに必要な治療を開始します。心不全の原因疾患を詳しく調べるために心臓MRI検査や心筋シンチ検査などの特殊な検査が必要な場合や、入院での検査や治療が必要な場合は、近隣の総合病院(済生会二日市病院・福岡大学筑紫病院・福岡徳洲会病院など)にお願いしています。

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