心臓弁膜症:心臓弁膜症とは?
心臓の「弁」とは?
心臓の内部には、血液が逆流することなく効率的に流れるように、左心室と右心室それぞれの入り口と出口に計4つの逆流防止弁がついています。左心室の入り口、つまり左心房と左心室の間には僧帽弁が、左心室の出口、左心室と大動脈の間には大動脈弁があります。さらに、右心房と右心室の間には三尖弁、右心室と肺動脈の間には肺動脈弁があります。
大動脈弁と肺動脈弁の形態はほぼ同じで、3つの弁尖からなります。僧帽弁は2つの弁尖、三尖弁は大小不同の3つの弁尖からなります。正常の弁は、どの弁も透き通るほど薄いのですが、1日約10万回もの拍動(=開閉)を何十年にも渡って支え続けています。
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心臓の内部構造のイメージです。左心室と右心室の入り口と出口に、逆流防止弁がついています。左心房と左心室の間には僧帽弁、左心室と大動脈の間には大動脈弁があります。右心房と右心室の間には三尖弁、右心室と肺動脈の間には肺動脈弁(この断面には含まれません)があります。
出典:インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス(一部改変)
正常の大動脈弁を大動脈側から眺めたところです。閉鎖した3つの弁尖は、透き通るように薄いのがわかります。
出典:PCRonline.com
4つの弁の位置関係と開閉のタイミングを示す図で、図の上が体の前側です。心室が収縮する収縮期には(左図)、大動脈弁と肺動脈弁が開いて左心室と右心室から大動脈と肺動脈へ血液が拍出され、僧帽弁と三尖弁は閉じて心房への逆流を防ぎます。心室が拡がる拡張期には(右図)、僧帽弁と三尖弁が開いて心房から心室に血液が流れ込み、大動脈弁と肺動脈弁は閉じて大動脈と肺動脈からの逆流を防ぎます。
出典:インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス(一部改変)
4つの弁の位置関係と開閉のタイミングを示す図で、図の上が体の前側です。心室が収縮する収縮期には(上図)、大動脈弁と肺動脈弁が開いて左心室と右心室から大動脈と肺動脈へ血液が拍出され、僧帽弁と三尖弁は閉じて心房への逆流を防ぎます。心室が拡がる拡張期には(下図)、僧帽弁と三尖弁が開いて心房から心室に血液が流れ込み、大動脈弁と肺動脈弁は閉じて大動脈と肺動脈からの逆流を防ぎます。
出典:インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス(一部改変)
「心臓弁膜症」とは?
心臓弁膜症とは、弁の機能障害のために血液が弁を通り抜けにくくなったり(狭窄症)、逆流したりして(閉鎖不全症)、血液の流れ具合(血行動態)に異常が生じた状態です。原因は、弁尖の炎症・変性・動脈硬化などです。狭窄症は、弁が硬く動かなくなって弁の開口が狭くなった状態です。閉鎖不全症(逆流症)は、弁が変形して閉まり具合(弁の接合)の緩みやずれを生じて血液が逆流している状態です。4つの弁のどれでも、狭窄症と閉鎖不全症のいずれも起こり得ます。心臓弁膜症は、代表的な心不全の原因疾患です。
心臓弁膜症の原因は何なの?
1980年頃までは、心臓弁膜症の原因の大多数はリウマチ性心臓弁膜症でした。リウマチ性心臓弁膜症は、小児期(5〜15歳)に罹ったリウマチ熱(溶連菌感染症)の後遺症です。リウマチ熱に罹患した後、何十年もかけて徐々に進行し30代から50代にかけて心不全で発症します。今や先進国では、リウマチ熱はほぼ制圧されたので、リウマチ性心臓弁膜症をみることはほとんどありません。近年、我が国で増加している心臓弁膜症の原因は、加齢や動脈硬化に伴う弁の変性です。とくに、大動脈弁狭窄症(AS)と僧帽弁閉鎖不全症(MR)が増えています。
弁の変性以外で多いのは、心不全の重症化に伴い右心室と右心房が拡大したために起こる三尖弁閉鎖不全症(TR)です。心不全に伴うTRは、弁自体には異常はなく心腔の拡大がもとで二次的に発生するので、二次性(機能性)TRとよばれます。
大動脈弁膜症の原因では、大動脈二尖弁などの先天性疾患が重要です。大動脈二尖弁は100人に1〜2人くらいの頻度でみられ、ASや大動脈閉鎖不全症(AR)の原因になります。また、大動脈弁を支える上行大動脈の根元が拡大して変形すると、大動脈弁の弁尖の間に隙間ができてARを生じます。原因となる病気は、大動脈弁輪拡張症(下の図)やマルファン症候群などの先天性疾患、高安動脈炎などの大動脈炎です。さらに頻度は稀ですが、感染性心内膜炎もARやMRなどの逆流性心臓弁膜症の原因として重要です。
出典:インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス
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