福岡県太宰府市の丸山医院(内科・消化器科・循環器科・リハビリテーション科)

2022-07-08

心不全とは?

心不全って、なに?

下の表の一般向けの心不全の定義で示すように、「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみがおこり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」。ここでは、一般の方に分かりやすいように「病気」という言葉が使われていますが、正確には、心不全は病気の名前ではなく病態(病気の状態・有り様)を表す用語です。

人間が生きて行くには、体の各部位に十分な酸素と栄養を行き渡らせる必要があります。その酸素と栄養を運ぶのが血液であり、血液を循環させるポンプの働きをするのが心臓です。ポンプとしての心臓の働きには、①血液を送り出す働き(収縮能、または収縮機能)と、②血液を受け取る働き(拡張能、または拡張機能)の2つがあります。心臓のポンプ機能である収縮能と拡張能のどちらか一方あるいは両方が何らかの原因で障害され、全身の臓器が必要とする量の血液を送り出せなくなった状態が心不全です。「心不全」と聞けば心臓の収縮能が低下している状態を思い浮かべるのではないかと思いますが、収縮能がほぼ正常でも拡張能が障害されれば心不全は起こります(サイドメモ「左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)」をご参照ください)。

出典:日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

心不全は、下の表で示すように様々な疾患が原因で起こります。原因の大半は、虚血性心疾患・心臓弁膜症・高血圧性心疾患などの心臓の病気です。その他の原因には、心臓を包んでいる心外膜の病気や不整脈、さらに心臓に影響を及ぼす心臓以外の病気もあります。心不全は、それらの疾患の終末像です。様々な疾患が進行して心不全にまで行きつくと、共通の病態を示すようになり共通した考え方で治療できるようになるのです。

心不全の原因疾患の一覧表です。
心不全の原因の大半は心疾患であり、赤で示した虚血性心疾患・高血圧(高血圧精神疾患)・心臓弁膜症が心不全の三大原因です。稀ではあるけれども心不全の原因となり得る疾患も含めて列挙してあります。

出典:日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン 急性・慢性心不全診療ガイドライン 2017年改訂版(一部改変)

心不全は、何が悪いの?

心不全で要注意なのは、治療がうまくいくと症状が無くなりすっかり治ったようになりますが、心不全(心機能の障害)そのものは完全には治らないということです。心不全は、数年をかけて徐々に進行し入退院を繰り返すようになり、やがて最終的には死亡の原因になります。心不全を含む循環器疾患は、がんに次いで我が国の死亡原因の第2位です。また、心不全の5年生存率(診断されてから5年後の生き残り率)は50%であり、がんと同じくらいあるいはそれ以上に予後(疾病の医学的な長期的見通し)が良くありません。心不全は、「だんだん悪くなって命を縮める」病態です。

さらに我が国では、高齢者の増加に伴い心不全が急速に増加しており、社会的な問題となっています。心不全が増えると死亡が増えるだけではなく、息切れなどの自覚症状のために生活の質が低下して健康寿命(日常生活が健康上の問題により制限されずに暮らせる期間)が縮まります。さらに、高齢者の心不全は若年者と比べて、治療に手間取り入院期間が長くなる上に、退院してもまたすぐ悪くなって再入院という具合に入退院を繰り返すことが多いです。このような高齢者の心不全に対応するためには、医師だけではなく看護師・理学療法士・薬剤師・栄養士・ケースワーカーなどのさまざまな職種によるチーム医療や、地域の医療機関や介護施設を総動員した取り組みが必要です。この問題については、最後の項で解説します。

心不全の進行度は、症状はないが心不全になるリスクがある「心不全リスク」の段階(黄色)と、心不全症状が出て積極的な治療が必要な「症候性心不全」の段階(ピンク)に大別されます。
「心不全リスク」の段階には、ステージAとBがあります。ステージAは、心臓には異常ないが高血圧・糖尿病などの生活習慣病がある状態です。心不全とは全く無縁と思われるような段階から心不全の予防は始まります。ステージBは、ステージAより悪化して心臓には何らかのダメージがあるが日常生活には全く支障のない心不全予備軍の状態です。一旦、心不全を発症すると後戻りできないので、何とかステージBで食い止めたいものです。
「症候性心不全」に進んだステージCは、足のむくみや坂道を登る時の息切れなど心不全症状が出てきた段階です。なるべく早く循環器専門医の診察を受け、適切な治療を開始する必要があります。ステージDは、心不全が進行して治療抵抗性となった状態です。下段の身体機能曲線において、下向きの大きな凹みは身体機能の急激な低下つまり心不全増悪による入院を表しています。入退院を繰り返すたびに身体機能は徐々に下降します。ステージDは末期心不全とも呼ばれ、心臓移植も考慮すべき段階です。

出典:日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン 急性・慢性心不全診療ガイドライン 2017年改訂版

サイドメモ:『左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)』はこちら

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