福岡県太宰府市の丸山病院(内科・消化器内科・循環器内科・リハビリテーション科)

2022-06-17

<サイドメモ>「まずは、4%の減量を!」

こちらの記事は、『生活習慣病:高血圧症』の補足記事です。

血圧に悪いことといえば、「塩分のとり過ぎ」を真っ先に思いつくかもしれません。そのほか、喫煙、肥満、運動不足、アルコールのとり過ぎ、野菜や果物の不足、睡眠不足などが高血圧を招くとされています。高血圧の治療では、降圧薬(血圧を下げる薬)をきちんと指示通りに服用することも大事ですが、生活習慣を是正することも薬と同様あるいはそれ以上に重要です。

生活習慣の是正では、塩分摂取の制限が一番難しいと思います。具体的にどうすれば良いかがわかりにくく、指導する方もうまく指導できずに困ってしまいます。それに引き換え、「体重の管理」と「運動を習慣付ける」ことは、指導する方もされる方もどうすれば良いかが分かり易いです。体重は「頑張って、2kg減らしましょう」、運動は「毎日30分間歩きましょう」などと具体的に指示することができます。

ところで、「体重をどれだけ減らせば良いのか」についてのデータはほとんどありませんでしたが、10年ほど前、その疑問に答えてくれる研究結果が報告されました(下の図)。厚生労働科学研究で示されたもので、特定健診後に6ヶ月間の保健指導を行ない1年後の健診結果の数値と比べてその増減を調べました。指導を行なったグループと行わなかったグループの比較検討も行われましたが、ここで示したのは積極的に指導を行ったグループの結果です。わずか3〜5%の体重減少により、収縮期と拡張期の血圧(上と下の血圧)、トリグリセライド(中性脂肪)、空腹時の血糖、過去1〜2ヶ月間の血糖値を反映するHbA1cの数値が低下し、善玉コレステロールであるHDL-コレステロールが増加しました。

特定健診の結果に基づき積極的な保健指導を6ヶ月間行い、1年後の健診の検査値と比べてその増減幅をまとめたグラフです。
*印は、体重減少が0%以上2%未満であった群と比較して、偶然の差ではなく統計学的な有意差をもって増減したことを表しています。血圧・トリグリセライド(中性脂肪)・HDL-コレステロール・空腹時血糖・HbA1cの全てにおいて、体重減少が2%以上4%未満、4%以上6%未満、6%以上8%未満、8%以上10%未満、10%以上であった全ての群に*印が付いています。

出典:厚生労働科学研究 津下班 平成23年度報告書 「生活習慣病予防活動・疾病管理による健康指導に及ぼす効果と医療費是正効果に関する研究」

代表研究者の津下一代先生によると、3〜5%の軽度の減量でも効果があったので、「まずは、4%の減量」を目指した指導を行うようになったそうです。従来の「BMI*122を目指した減量」よりわかりやすく達成できそうな目標といえます。4%の体重といえば体重50kgの人では2kg、60kgの人では2.4kgです。「2〜3kgの減量」であれば、やってみようという気になります。本研究では、参加者の3割以上が「4%の減量」に成功したそうです。高血圧・糖尿病・高脂血症(脂質異常症)などの生活習慣病の始まりと増悪の要因は、体重が増えること、つまり肥満です。全ての高血圧治療ガイドラインでは、適正体重を維持し必要があれば体重を減らすことを推奨しています。まずは、体重を4%減らすことにトライしてみましょう。

*1:BMI(Body Mass Index)ボディマス指数とは、国際的に使われている成人の肥満度を表す体格指数です。体重(kg)を身長(cmではなくm)の2乗で割って求めます。体重65kg・身長160cmの場合は、BMI=65/1.62=65÷1.6÷1.6=25.4です。
WHOの基準では30以上が「肥満」です。日本肥満学会の基準では、18.5未満が「低体重(やせ)」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」とされています。BMIが 22となる時の体重が標準体重で、最も病気になりにくい状態とされています。身長160cmの場合の標準体重は、22×1.6×1.6=56.3kgです。

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