福岡県太宰府市の丸山医院(内科・消化器科・循環器科・リハビリテーション科)

2022-05-09

<サイドメモ>遺伝子が喜ぶ「奇跡の令和食」 家森幸男著(集英社 インターナショナル)

こちらの記事は、『生活習慣病』の補足記事です。

がんに次いで日本人の死因の第2位である狭心症や心筋梗塞などの心疾患、さらに同第3位の脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患は、平均寿命だけではなく健康寿命(日常生活が健康上の問題により制限されずに暮らせる期間)を縮める恐ろしい病気です。それらを未然に防ぐためには、高血圧症や糖尿病・高コレステロール血症などの生活習慣病を少しでも克服しなければなりません。その解決手段のひとつとして、食事を見直すことはとても重要です。そこで本稿では、信頼性のある膨大なデータに基づいて、健康を保つための食事について分かりやすく解説されている本をご紹介します。

著者の家森先生たちは、1985年からWHO(世界保健機構)の「循環器疾患と栄養国際共同研究(CARDIAC study)」を開始し、30年以上に渡り25か国61地域に足を運んで健康調査を行いました。2万人分以上の尿(24時間尿:1日分の尿)と血液を分析して得られたデータにより、我々が目指すべき健康長寿食が明らかとなりました。言葉も通じないようなところでも、現地の人とのコミュニケーションがうまく取れなければ、血液や尿をもらうような健康調査ができるはずがありません。本の中にも書かれていますが、時には思わぬハプニングや危ない目にも遭われたようです。家森先生の地道な努力とバイタリティーには、本当に頭が下がる思いです。

家森先生の研究の概略は、以下の通りです。世界のあらゆるところに出向いて行き、その土地の人たちの尿と血液を集めて詳しく分析し、普段どのようなものをどれくらい食べているのかを調べました。そのデータを、元気いっぱいの高齢者がたくさんいる長寿地域と60歳以上がほとんどいないような短命地域とで比較したり、長寿地域から移民して寿命が短くなった人たちについては元々住んでいた地域と移民先とで比較しました。そのような比較検討により、食事が健康状態や寿命にどのような影響を及ぼすかが解明され、その結果、究極の長寿食である「令和食」が明らかとなりまた。「令」は「美しい」を、「和」は「バランス」を意味しているそうです。本書の中で家森先生が幾度となく強調されているのは、大豆食品と魚(魚介類)のゴールデンコンビをできるだけ多く摂ることです。肉食をしなかった昔の日本人の伝統食こそ理想に近い長寿食ということです。塩分が多い欠点をなくせば、さらに理想に近づきます。また、「令和食」を1日に1回だけでも摂ると良い効果があることがすでに実証されており、家森先生も奥様の手作り弁当で「1日1回の令和食」を実践されているそうです。詳しくは、本書でお確かめください。

私も患者さんに食事についていろいろとお伝えしたいという思いは強いのですが、外来診察中の短い時間で食事の注意点についてわかりやすくお話しすることは至難の業です。この本は、まさに私の思いを代弁してくれる1冊です。一般の読者向けに読みやすく書かれた本ですので、少しでも興味のある方はこの本を読んで食事を見直すきっかけにしていただければと思います。
なお、家森先生の著書はこれ以外にも数多くありますし、ウェブサイト上のコラムや対談もたくさんあるので宜しければご参照ください。

著者の家森幸男先生のプロフィール

1937年、京都生まれ。京都大学医学部卒業後、同大学医学部助教授、島根医科大学教授などを歴任。京都大学名誉教授、武庫川女子大学教授、国際健康開発研究所長。
健康長寿の秘密を探るべく、WHOの研究センターを創設し、世界25カ国61の地域で二十余年を費やし健診。1998年、予防栄養学への貢献により紫綬褒章を受章。日本脳卒中学会賞、米国心臓学会賞、日本循環器学会賞、ベルツ賞、杉田玄白賞など受賞。
80歳を過ぎた今も日本や世界を回って食と健康の研究を続けている。

『遺伝子が喜ぶ「奇跡の令和食」』より

参考サイト

<プレジデントオンライン(PRESIDENT Online)>

<日経Gooday|世界の長寿食の秘密 >

日本食糧新聞 |百菜元気新聞

<健康長寿ネット(公益財団法人 長寿科学振興財団)>

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