福岡県太宰府市の丸山病院(内科・消化器内科・循環器内科・リハビリテーション科)

2022-05-24

<サイドメモ>PCIの特殊な治療器具

こちらの記事は、『虚血性心疾患:経皮的冠動脈形成術(PCI)』の補足記事です。

冠動脈の動脈硬化性病変の中でも非常に硬い石灰化病変は、バルーンカテーテルをどんなに強く膨らませてもびくともしません。そのような場合は、超高速回転ドリルともいうべきロータブレーターを使って石灰化病変や硬いプラークをけずり取ります。ロータブレーターの先端はダイアモンド粒子でコーティングされており、1分間に15万〜20万回転します。ロータブレーターでけずり取られた組織は、赤血球よりも小さな微粒子となるため毛細血管に詰まることはなく尿中にそのまま排泄されるか免疫細胞に食べられて(細胞内に取り込まれて)処理されます。

ロータブレーターによるPCIの様子を示す模式図です。

①ガイディングカテーテルを冠動脈の入り口に差し込み、POBA(バルーンカテーテルでのPCI)と同じように、極細のガイドワイヤーに沿わせてロータブレーターの先端を病変部近くまで進めます。
②ロータブレーターの先端はダイアモンド粒子でコーティングされており、1分間に15万〜20万回転します。ロータブレーターの先端を、軽くつつくように2〜3秒間ずつ病変部に押し当てることを繰り返します。
③病変部が少しずつけずられて、ロータブレーターの先端が病変部を貫通したら手技は終了です。
④治療後の状態です。

出典:インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス

治療部位のプラーク(コレステロールがたまってできた動脈壁の隆起)の量が多い場合には、方向性アテレクトミー(DCA)というカンナのような特殊な治療器具を使って動脈壁の内側からプラークをそぎ取ります。

方向性アテレクトミー(DCA)カテーテルの先端部分の写真(上)と、治療の様子を示すイメージ図(下の5枚の図)です。上の図では、左側がカテーテルの先端です。カテーテルの先端の少し手前に窓のような横穴が開いており、そこをカンナのような刃(Cutter)がモーター駆動でスライドして病変部をそぎ取ります。横穴の反対側にはバルーン(Balloon)が付いています。

①(Positioning) まず、刃の付いた横穴の位置を切り取りたい病変部分(左下方向)に合わせます。
②(Balloon inflation) バルーン(右上)を膨らませて横窓を病変に密着させます。
③(Cutting) Cutterをスライドさせて病変をそぎ取ります。そぎ取られた組織は、先端部のNose cornの中に溜まります。
④(Rotation) 横穴の向きを変えて、病変をさらにそぎ取ります。

出典:ニプロ株式会社ホームページより

急性冠症候群などで病変部に血栓が多量に付着している場合には、血栓吸引カテーテルを使って血液と一緒に血栓を吸い出します。また、エキシマレーザーを先端から照射する特殊なカテーテル(エキシマレーザーカテーテル)を使って血栓を消滅(蒸散)させる方法を用いることもあります。

血栓吸引カテーテルの本体(上)と先端部分(下)の写真です

カテーテルの先端部分には大きな吸い込み口があり(左下の写真)、カテーテル本体の根本(上の写真の右端)に注射器を取り付けて血栓を血液と一緒に吸い出します。原理は単純ですが、結構効果があります。

出典:テルモ(株)ホームページより

エキマレーザーカテーテルによるPCIの様子を示すイメージ図です。

A エキシマレーザーカテーテルは、他の治療器具と同じように、ガイディングカテーテルの中を通してガイドワイヤーに沿わせて出し入れします。カテーテルを病変部に押し付けて、カテーテルの先端からエキシマレーザーを照射しながら進めていきます。
B カテーテル先端が触れたわずかな部分(深達度は0.05mm)だけが蒸散されるので、周囲の組織を損傷することなくプラークを除去できます。蒸散された組織は、ガス・水分子と赤血球よりも小さな微粒子となるので血管に詰まることはありません。
C レーザー照射後の病変部位です。
D エキシマレーザーカテーテルの先端部分の外観です。

出典:©️ 2020 Koninklijke Philips N.V.

[関連記事]

ページ上部へ移動