福岡県太宰府市の丸山病院(内科・消化器内科・循環器内科・リハビリテーション科)

2023-07-24

大動脈瘤とは?

大動脈とは?

大動脈は、左心室から送り出された血液が最初に通る動脈の本幹で、全身の臓器や組織に向かう動脈が枝分かれする前の最も太い動脈です(直径は約3cm)。大動脈の呼び名は、部位によって変わります。
心臓から体の上方に向かう上行大動脈、次いで体の下方に反転しながら背中側へ向かう弓部大動脈(大動脈弓)、背骨(脊柱)の近くを体の下方に向かい腰部で左右の総腸骨動脈に分かれるまでが下行大動脈です。横隔膜より上の大動脈(上行大動脈から横隔膜までの下行大動脈)を胸部大動脈と呼び、横隔膜から下の下行大動脈を腹部大動脈と呼びます。胸部大動脈からは、脳・肺や両腕に向かう動脈が分岐します。腹部大動脈からは、肝臓・膵臓・腎臓・小腸・大腸に向かう動脈が分岐します。

大動脈イメージ

大動脈瘤とは?

大動脈瘤とは、大動脈の一部が全周性にふくれて局所的に拡大した状態、または袋のように突出した状態です。成人の大動脈の太さは、胸部では20〜30mm、腹部では15〜20mmです。一般的に、大動脈の直径が正常の1.5倍(胸部は45mm、腹部は30mm)を超える場合を大動脈瘤といいます。

発生部位により、胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤(横隔膜をまたいで胸部と腹部に連続する場合)、腹部大動脈瘤と呼びます。大動脈瘤は大動脈のどの部分でも発生しますが、約3/4は腹部大動脈瘤です。大動脈瘤の形状が紡錘状であれば紡錘状大動脈瘤、嚢(袋)状であれば 嚢状大動脈瘤と呼びます。大動脈瘤の原因の多くは動脈硬化ですので、60代以上の高齢者に多い病気です。特殊な原因として、外傷による大動脈の損傷、大動脈炎などの炎症性疾患、マルファン症候群(全身の結合組織が脆弱になる病気)などの遺伝性疾患があります。

紡錘状大動脈瘤と嚢状大動脈瘤のイメージ

紡錘状大動脈瘤と嚢状大動脈瘤のイメージです。紡錘状とは、紡錘(つむ:糸を紡ぐための道具)に巻いた糸の形状のことで、全体は円柱状で中ほどが太く両端が次第に細くなっている形のことです。嚢状とは、「袋のような形」という意味です。
出典:日本循環器学会/日本心臓血管外科学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会合同ガイドライン
大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2020年改訂版)

CT検査や超音波検査で偶然見つかることが多いです

大動脈瘤が大きくなって周囲の臓器や神経を圧迫すると、何らかの症状がみられることがあります。食道が圧迫されると、食べ物が飲み込みづらくなります。喉頭につながる神経(反回神経)が圧迫されると、しわがれ声(嗄声)になります。これらの症状がきっかけで、大動脈瘤が見つかることもあります。しかし、自覚症状があるのはむしろ例外的で、通常は大動脈瘤があっても自覚症状は全くありません。
人間ドックで受けたCT検査や、採血で肝障害が見つかり念のため受けた腹部エコー検査などで偶然見つかることが圧倒的に多いです。時には、腹部の診察(触診)の時にドクドクと拍動するシコリに気付かれて、腹部大動脈が見つかることもあります。でも、大動脈瘤が見つかった全ての患者さんで手術が必要なわけではありません。

ページ上部へ移動