2026-02-20

その他の特発性心筋症

HCM・DCM以外の特発性心筋症

特発性心筋症には、肥大型心筋症(HCM)と拡張型心筋症(DCM)のほかに、拘束型心筋症と不整脈原性右室心筋症(ARVC:Arrhythmogenic Right Ventricular rrhythmogenic Cardiomyopathyの略称)、さらに分類不能の心筋症があります。しかし、我が国のガイドラインで取り上げられているのは、HCMとDCMだけです。拘束型とARVCについては、ガイドラインを作るに足る情報がまだ揃っていないという判断です。事実、拘束型はかなりの情報不足です。一方、ARVCについては、症例報告や病気の全体像を解説した総説が散見され、ある程度の情報は蓄積されています。

拘束型心筋症

拘束型心筋症は、心臓が硬くなり左心室の拡張能が低下して、心不全をきたす原因不明の病気と定義されます。左心室の収縮能は正常で、肥大や拡大など見た目の異常はありません。左心室と右心室の両方が障害されることもあります。

HCMやDCMに比べて、拘束型は非常に稀で、その病態(病気のありよう)はよくわかっていません。1998年に行われた厚生省の全国調査では、拘束型の全国推計患者数は約300人で、人口10万人あたり0.2人でした。世界的にみると、アフリカ・インド・中南米・一部のアジアの国々では比較的多いようです。

初期は無症状ですが、進行すると心不全の症状が現れます。また、心房細動を併発しやすいです。心房細動になると、心不全が悪化しやすく、左心房内に生じた血の固り(血栓)が剥がれて動脈に詰まって起こる塞栓症(その多くは脳梗塞)を起こします。拘束型心筋症の予後は、不良と考えられています。

不整脈原性右室心筋症(ARVC)

ARVCの基本的な特徴は、右心室が発生源の心室頻拍(VT)と、右心室の拡大と収縮能障害です。病変部位では、心筋細胞が脂肪と線維組織に置き換わっているため、電気刺激の伝わり方が一様でなくなりVTの成因となります。小児例は少なく、60代までの成人に多い病気です。家族内発生が30〜50%にあり、心筋細胞同士の接合に関わるデスモゾームの構成蛋白の遺伝子異常が報告されています。

初期は無症状ですが、進行すると右心室起源のVTが起こります。自覚症状としては、動悸やめまい・失神発作があります。突然死をきたすまで自覚症状がなく、「初めての症状が突然死」ということもあります。右心室全体に病変が拡がると、右心不全を生じます。多くの場合、左心室には異常がなく、異常があっても軽度であり重症の左心不全は稀です。

確実な診断には、病理学的診断(顕微鏡検査)や遺伝子診断が重要です。しかし、病理学的診断に必要な心筋生検では、サンプリングエラーがあり得ます。つまり、採取した心筋サンプルに病変部位が含まれているとは限らないので、本当はARVCであるのにARVCと診断できない場合(偽陰性)があり得ます。遺伝子診断は、まだ研究段階であり通常に行う検査ではありません。実際には、1994年に策定され2010年に改訂された国際的な診断基準1)に照らし合わせて診断します。

治療では、予後への影響が大きいVTの対策が重要です。VTは運動中や精神的に興奮した時に発生しやすいので、競技スポーツや激しい運動は制限します。薬物療法ではβ遮断薬が第一選択で、無効な場合はアミオダロン(抗不整脈薬)を併用します。VTの発生源に対して高周波通電を行う、カテーテルアブレーションは有効性が高い治療法です。ただし、ARVCの病変は進行性なので、一旦治ったVTが再発することがあります。VTが再発した場合には、抗不整脈薬(内服)の追加や、2回目のアブレーションを考えます。

救命処置を受けてVTによる突然死を免れた場合や、VT中に失神や急激な血圧低下が起こり危険な状態になる場合は、植込み型除細動器(ICD)が第一選択です。一方、VT中も血圧低下がなく安定している場合は、抗不整脈薬の内服・カテーテルアブレーション・ICD植込みのいずれかで治療します。どの治療法を優先するかは、ケース・バイ・ケースです。

1)Marcus FI, et al.  Diagnosis of arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy/dysplasia: proposed modification of the Task Force Criteria.  European Heart Journal 2010; 31: 806-814

分類不能の心筋症

ガイドラインによると、分類不能の心筋症とは「4つの基本病型に分類できない心筋症」です。まず考えられるは、2つの病型のオーバーラップです。しかし、HCMとDCMのオーバーラップは、「収縮能が低下したHCM」と診断されるかも知れません。DCMとARVCのオーバーラップは、「左心室の病変が高度のARVC」と診断されるかも知れません。

想定される2つ目のパターンは、4つの病型に当てはまらない全く異質の心筋症です。いずれにせよ、「分類不能の心筋症」はかなり稀と思われます。

[参考資料]

  • 日本循環器学会/ 日本心不全学会合同ガイドライン 心筋症診療ガイドライン(2018年改定版)

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